コントラバスのスリーフィンガー奏法を練習し始めたのは今年の1月からで、現在は概ね形になってきている。練習方法についてはインターネットを探してもあまり情報が出てこないため、今年1月からどのように練習すべきか試行錯誤していた。「コントラバス スリーフィンガー(Double bass Three Finger)」で検索すると、少なくとも、日本語/英語のソースではシマンドルの左手のスリーフィンガーを指しているケースが多く、右手のテクニックについては情報がない。Talkbass.comではいくつかスレッドがある程度だったが、具体的な練習方法はあまり記載がなかった。
そのため習得にあたり自分にとって何が1番効果的だったか、もし今年1月にタイムトラベルして自分に会えたら伝えたい内容を以下に記載する。
まずはじめにスリーフィンガーというと右手のテクニックのみのイメージがあるが、実際は右手と左手のコーディネーションが要になる。そのため、最初から右手と左手は両方同時に鍛えたほうが良い。スピードは時間と共に改善されるため焦る必要はない。
例えば、慣れていないと、脳は左手の人差し指での押弦は右手の人差し指で弦を弾くよう指示する。本来であれば、スリーフィンガーは薬指→中指→人差し指→薬指の順番であるため、左手の人差し指で押弦した場合、右手の薬指で弦を弾く必要がある。
ちなみにスリーフィンガーの順番ついては、薬→中→人→中→薬→中という順番もTalkbassのスレッドやYuri Goloubev氏がデモしているのを見たことがあるが、ここではビリーシアンやニールスペテルセンの順番: 薬→中→人→薬とする。薬→中→人→中→薬→中は中指に集中的に負荷が掛かる可能性があり、私は慣れなかった。
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3つの指に対してトリプレットで割るのではなく、4ビートで割ることに脳が順応しないといけないため、1度と5度を4ビートで行き来する練習は効果があった。例としては E弦からA弦上を FFFF(E弦) CCCC(A弦)→ F# F# F# F#(E弦) C# C# C# C#(A弦) → GGGG(E弦) DDDD(A弦) のような形で、できるだけ高い音まで行き、終わったら A弦、D弦のペアで同じ内容、D弦とG弦のペアで同じことを繰り返す。また、常に気をつけないといけない点は最初と最後に弾いた指を覚えておかないといけない。例えば上記の練習を薬指から弦を弾いた場合、FFFF CCCCで最後のCは中指になる。最後に弾いた指が正しくなければ、どこが間違っているのかを必ず探す必要がある。(これはどの練習をしても同じことが言える)。難しい点として、速いフレーズを弾いた後、最後の指が狂っていることに気づいても、いつ指の順番が間違っているのか分からなくなる時がある。その場合は、間違っている演奏をビデオで撮影し、どこが間違っているのか、どうして苦手なのかを把握した上で修正することが大事である。例えば、私の指が狂うケースとしてはE弦からD弦までを行き来するようなフレーズを弾く時、人差し指→薬指に戻らずにツーフィンガー奏法のように人差し指→中指に戻ってしまったりした。また中指が他の指と比べて1番長いため、意識せずに速いフレーズを弾くと、気づいたらツーフィンガーのように薬指と人差し指だけを交互に弾いているケースも多かった。
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上記の右手左手を同時に練習する動作に加え、補足的に右手だけで開放弦を弾く練習も効果があった。左手を最初から等式に入れると脳のCPUが処理しきれない可能性がある。
また、練習始めの頃はそのまま弾くと、タタタタの4ビートではなく、タタタッタタタッというアクセントが付いたトリプレットのようなリズムになるが、これは薬指の筋肉や神経が弦を弾く動きに慣れていないことに起因する。従って、3本指で弾くのではなく、ひたすら薬指と中指を交互に弾く方法が重要だった。メトロノームを使って毎日少しずつBmpを上げる練習は実際にスピードが上がることが実感できた。薬指と中指の組み合わせほど重要ではないが、人差し指と薬指を交互に弾く方法もある程度練習したほうが良い。
一番効果のあった練習方法は、前述した通りどこが自分の弱点なのかを見極めないと見つけるのが難しいが、自分の場合は以下の2つが最も効果的だった。
1つ目は例えばFメジャースケールを以下のように弾く。
FF(E弦) GG(E弦) AA(A弦) BbBb(A弦) CC(A弦) DD(D弦) EE(D弦) FF(D弦)終わったら半音高いF#からF#F#(E弦) AbAb(E弦) BbBb(A弦) BB(A弦) C#C#(A弦) EbEb(D弦) FF(D弦) F#F#(D弦)という感じでスケールを一つの音に対して2回弾く方法。E弦、A弦、D弦のセットが終わったら今度はA弦、D弦、G弦のセットでスケール練習する)これは左手右手の動きを脳の中で繋げるのに非常に効果的だった。
2つ目は1度3度5度7度のアルペジオを弾く方法。例えばG弦のE、D弦のC、A、A弦のF、E、F、D弦のA、C、G弦のEの順番で弾く(F△7)。最初薬指で弾くと最後に弾く指も人差し指でFを弾く時また薬指に戻るので分かりやすい。また、大事なのはそれぞれのエクササイズで必ず一番最初に弾く指を毎回変えることだと考える。薬指で始めたら次は中指から、その次は人差し指から、というように練習する。スリーフィンガーは1つの弦だけを連続して4ビートで弾く場合は、習得するのにそこまで時間は掛からない。一番難しいのは右手と左手の動きを意識して弦移動するフレーズを弾く時に右手の指の順番が狂わないようにすることだった。
派生として、4弦全部を使うエクササイズも効果はあった。例えばAb(E弦) B(A弦) Eb(D弦) F#(D弦) Bb(G弦) まで上がり、F#(D弦) Eb(D弦) B(A弦)Ab(E弦)と戻るのを繰り返すエクササイズなど(Abマイナーの9度までを行き来する)。このエクササイズに、1つの音に対して2回弾くのも効果は高かった。
補足的には開放弦を4ビートで弾く時に1&3か2&4にあえてアクセントをつける練習も効果はあった。というのも、エレキベースのような弦に対して垂直に指を置く方法ではなく、コントラバスのピチカートの指を弦と並行になるように弾く方法だと、人差し指でアクセントをつけるのが難しい。これは腕と手首の動き方に起因する。薬指、中指は腕を振り下ろした時に、腕の重さを弦に乗せることができるため、アクセントが付けやすいが人差し指の場合、薬指を次に出す準備を瞬間的にしないといけないため、意図的にアクセントを付ける練習が必要となる。
スリーフィンガーはツーフィンガーとスピードの観点では大差はないように見える。どちらも極めれば速いスピードでフレーズを出すことができる。私はスリーフィンガーを完全に体得できたとは思ってないため、一般化した結論付けできないが、良い点としてはツーフィンガーより指が休める時間が伸びた。ツーフィンガーだと指が忙しいのに対してスリーだと1本増えた分速いフレージングを出しても余裕が生まれるように感じる。
スリーフィンガー習得にあたり、使用している弦や弦高も重要になってくる。たとえば、私が過去に使用していた弦はテンションが強く、最初は薬指で弦を弾くのが痛かった。練習に慣れてもたまに薬指が痛い時があった。どうしても難しい場合はテンションが強くない弦に交換したほうが良い。
また、右手親指の位置によって、右手で弦移動する時に指がもつれて順番が狂うかどうかが変わる。親指は指板に意識的に固定するか、G弦を弾く際にはE弦orA弦に乗せる感覚を掴むと、生物力学的理由は分からないが指の順番狂わず弦移動できる。これについては、エレキベースでは特に親指は固定する意識をしないと弦間隔が短いため、弦をスキップするフレーズを弾く時に指が狂いやすかったので注意が必要だった。フィンガーレストやピックアップに親指を必ず乗せることを意識する必要があった。
練習に時間が掛かると思った点としては、コントラバスでエレキベースのような奏法をする場合、コントラバス独自のピチカート奏法(弦に対してある程度指を並行にする)のスリーフィンガーの練習に加えてエレキベースの3も練習しないといけないため、単純に練習時間が2倍に増える。ただ、コントラバスでエレキベース奏法の3を練習すると、ある程度はエレキベースに応用できる。エレキベースから3を練習してそれをコントラバスに移行しようとしても、コントラバス弦のテンションや弦間隔の差異から応用は難しいように思う。
追記11/18: 2フィンガーと比べて3フィンガーは右腕の重さで弦を弾く感覚を習得するのが難しい。人差し指、中指と比べて、特に薬指に弦を引っかける動作で腕の重さを意識するのが難しい。それぞれの指(人差し指、中指、薬指)にそれぞれの弦(E/A/D/G)を引っかけて、肩から指先の繋がりや力の伝わり方を感じながら弾く動作を、メトロノーム40bpmのスローテンポで練習する必要がある。