RobPinというコントラバスのエンドピンを今年6月から使用している。
このエンドピンは一般的なストレートエンドピンとは異なり、エンドピンの接続部分が曲がっていて、重心がコントラバスのエンドピンの穴から少し後ろの裏板の近くになっている。最初にこのエンドピンに興味を持ったキッカケは、Francois Rabbath氏がコントラバスのエンドピンの後ろにドリルで穴を開けて新しくエンドピンを付けたのをYoutubeで紹介していた。
指板が斜めになることにより腕の重さを使えることを語っている。アルコも同様にアルコの重さを使うことができるので、筋肉を使う必要がないとも(動画21:22あたり)。ジャズベーシストのジョン・クレイトン氏もFrancois氏に影響され、レイ・ブラウン氏が使っていたコントラバスに穴を開けたとTalkbass.comで見た。
Francois氏のようにコントラバスの後ろに直接ドリルで穴を開けるのは敷居が高いため、特殊な形状のエンドピンで代用できないかリサーチした。英語でdouble bass bent endpinやAngled Endpinで調べるとTalkbass.comのスレッドに情報があった。
RobpinはTalkbass.comのスレッドに制作者のRob Anzellotti氏が登場して、ユーザーのフィードバックに反応してることから信頼性があると考えた。(参照)
購入しようと決めたが最初は金額に躊躇した。Robpinの価格は当時の円ユーロのレート換算で4万円弱だった。ただ、エンドピンは直径が合えさえすれば一生使えるので投資する価値があると考え購入を決めた。ストレートピンと曲がったピンでどれぐらいの差異があるか確かめたかった。
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購入方法はWebサイトからではなく、直接Rob氏とメールでのやり取りになる。購入に興味ある旨を伝えると以下の返信が返ってきた。
確認事項が2点あった。1つ目はエンドピンの直径が10mmかどうかだ。10mm以外である場合$20のアダプターが必要となる。私のは10mmだったため、問題なかった。2つ目は使用しているエンドピンをソケットからどれぐらい伸ばしているか。最低5 inches=12.7cm以上から対応しているとのこと。自分のエンドピンの設定は10cmだったので不安だったが、大体5inches伸ばしているとRob氏に伝えた(後述するが心配は不要だった)
その後、Rob氏からインボイスを送ってもらった。支払いはインボイスに記載されているドイツの銀行に外貨送金した。(支払い方法は外貨送金かPaypalとなる)。支払いした旨伝えると現住所の確認があったため、そちらも伝えた後、エンドピンを発送してもらった。
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発送から日本への到着までは約1週間半掛かった。箱の中身は調整用六角レンチと大小バラバラの銀の棒4本と、棒を差し込む黒い長方形の金属部品と接着剤(以下写真にはない)だった。接着剤は自分の好みのセッティングが決まったら棒とボールエンドに流し込んで固定する用とのこと。私はボールエンド部分にセロテープを挟み込んだため、使っていない。
実際に取り付けてみて最初に感じた事はコントラバスの音が以前より大きくなったことだった。
エンドピンを変えることで音響的影響があるとは想像していなかったため驚いた。考えられる理由としては2点ある。一点目はRobpinの銀の棒が冷間圧延炭素鋼(Cold rolled carbon steel)から作られていて、一般的に使用されるスチールより音響的効果があるのかもしれない。Rob氏はTalkbass.comのスレッドで過去にステンレスで製造していたものの、冷間圧延炭素鋼に変えたことでステンレスより’議論の余地なく’優位だったと語っている。参照
2つ目の理由としては、エンドピンの形状が曲がっていることから、サウンドホールが若干上に傾くため、より音が聞こえやすくなった可能性がある。
使用開始から数分ぐらいは身体が慣れなかった。指板が垂直ではなく斜めになっているので違和感を覚えた。ただ、数十分程度で身体が慣れた頃、ハイポジションへのアクセスがスムーズであることに気づいた。また、ローポジション、ハイポジション共に押弦する負担が明らかに減った。
また、Robpinをソケットを左右に動かして、コントラバスをどのように構えるかによって姿勢を調整することができる。例えば、Lynn Seaton氏のコントラバスにはRobpinではないものの曲がったエンドピンが搭載されており、彼はG弦方向にエンドピンが曲がっている。
一方でTalkbass.comのRobpinユーザーの多くはRobpinをE弦側に傾けるほうが姿勢が安定するという意見が多かった。私は最初はTalkbassists 同様E弦側に傾けていたが今は若干G弦側に傾けている。理由としては若干G弦側に傾けることにより指板角度を斜めからより地面に対して並行にしたかった。こうすることでE弦を押弦する際に、影響はごく僅かかもしれないが、左手の指のカーブを保ちつつ指先で押弦しやすいと考えた。文章で説明するのはなかなか難しいため写真を以下に。
構造的には、冷間圧延炭素鋼の材質に拘らなければ、ホームセンターで機材を集めてDIYできそうだ。また、5inches(12.7cm)制限についてはある程度低く調整することができるので、問題なかった。今のセットアップよりも、ボールが付いている棒を後少し短くすることでセッティングを低くすることができる。目視だとおそらく6cmぐらまでは短くなるため、これぐらいがソケットから伸ばさないといけない最低ラインとなりそう。
利点だけではなく欠点もある。1つはラバーボールが突然取れる時がある。数ヶ月に一回なので頻度は高くない。回転させてスパイク部分に取り付けるため、使用していると緩くなる。もう一つはエンドピンソケット部分が完全に固定されず、Robpin全体の角度がずれる。これはSaddle Riderのエンドピンソケットを使うことをRob氏がTalkbass.comで推奨していた気がする。自分は気にならないので問題ない。
結論としては、値段が高いのはネックではあるものの、製品の質が高く、Robpinがあるのと無いので明らかに左手の負担が減り、ハイポジションへのアクセスが容易になった。近い将来ストレートエンドピンよりもRobpinのような曲がったエンドピンがベーシストの間で主流になるかもしれない。
追記 (2024年12月18日): このブログ(英語版)にROb本人からコメントがあり、滑りやすいラバーボールやエンドピンソケットの回転の問題が解決されたとのこと。彼によると、ラバーボールはより硬い素材に変更され、滑りにくさが向上した。また、平らな表面を持つロッドが新たに追加され、エンドピンソケットが回転せず、しっかり固定されるようになっているとのこと。