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2月の大半は家で過ごすことが多かった。1年務めた会社を2/26に退職するため余った有休をすべて使用し3月から移り住む岡山(瀬戸内海)の島に見学に行ったり、1月から計画している自転車の後ろにつけるキャンピングカー(Bike Camper)を実際に材料をホームセンターで購入し組み立てたりと忙しくも充実した月だった。サイレントベースの練習は、引き続き基礎を重視して今月はDメジャーのトライアドを練習した。先月はF#だった。苦手なキーから潰している。改善の必要性を感じた点として、ハイポジションと比較してローポジションの左手がスムーズではない点。そのため今月は決められた課題やLickの練習というよりは時間があればとにかくローポジションに触れる機会を増やすことにした。スタンダードはあまり使わないようなキーをMoiseアプリで転調させてあえてサイレントベースのローポジションだけで弾く練習をすることが多かった。親指を使うハイポジションと比べてフレット間隔が広いことは当然ながら、左手薬指と小指がまだ鍛えられていないことを認識したため、左手の指の独立性を高めるエクササイズを行った。フルタイムで働いていた際は時間が限られているため、大まかな練習の流れとして、基礎→課題Lick→ウォーキングベース→スタンダード課題曲→ソロコピーと万遍なく練習することが多く計画を意識せず楽器に触れて即興練習だけすることはあまりなかった。一方で長時間楽器に触れることで今まで記憶してきたLickを出す練習ができたので悪い練習ではなかった。
今月は数あるインタビュー/マスタークラス動画の中でもHal Halper(キャノンボールのピアニスト)の動画が最も印象に残った。彼によると、弾きたいアイディアが弾けない理由は一般的に単にテクニックの観点で練習不足であると考えられがちだが、実際には頭の中で出したい音が聞こえていないことが起因していると説明している。寧ろミスも含めて頭の中で聞いている音をそのままを再現しているだけに過ぎないと語っている。この仮説を知ることは非常に為になった。いかに集中してリスニングをして鮮明な音とアーティキュレーションを頭の中に叩き込まないいけないかを再認識した。
検証として動画内で彼はある速弾きピアニストのソロを3時間程聞いた直後、同じように速弾きしたらなんとか弾けたが、30分後には弾けなくなったという。時間の経過とともに頭の中で再現されている音が段々と聞こえなくなってしまうからだと説明している。
Hal Galperのこの仮説を聞いてから今月はとにかく集中してリスニングした。スイング感とは何かより深く探りたく、特にパーカーのアーティキュレーションやシンコペーションを意識して聞いたり、コピーすることが多かった。
他にも彼は昨今のジャズの教育方法について、西洋的な理論に基づいたカリキュラムが主流であることに対して批判的であった。ジャズはアフリカルーツの音楽であるため、体験に基づいた教育がより必要であると語っていたのを思い出す。このことについても非常に同感できる。西洋的なスケールやハーモニーは教科書を見て習得できるかもしれないがジャズ特有のスイング感やグルーブは言語化し難い(マネタイズしづらい)。このような背景から、ジャズを学ぼうとしてYoutubeで動画を探しても、どのように音楽を聴き特有のグルーブを体得するかというより、何のスケールを弾くか等理論的な内容が殆どであることが分かる。偉大なジャズのレジェンド達は本や理論でジャズを学ばず、ライブやレコードでアクティブにリスニングして特有のグルーブを築き上げたことを考えると、何をすべきかは自明と考える。