8月からの暑さは続き、エアコン常に稼働が当たり前の日常だった。また職場は9月初旬から変わった。前は自宅から自転車で10分のところだったが、今は電車で1時間半以上かかる。練習時間は減ったものの音楽を聞く時間が増えた。よく寝て朝に聴く音楽は別の時間帯に聴く音楽と感じ方が異なる。時間はあっても一日の中で特定の時間範囲内でしかできないタスクがあれば、集中して音楽を聴くのもそれに当てはまるかもしれない。練習も朝のほうが断然良いと感じる。
練習は左手のフォーム改善、新しいLickの取得、ブレッカーのNothing Personal Liveのソロコピーをしている。やっと右手の3フィンガーも指がもつれることがなくなり、Lickやコード進行に集中することができる。以下は9月初旬に頭の中にあったトピック。
1 モードの音と色、他変数との共感覚
2 ジョー・ヘンダーソンの曲(Recorda Me, Isotope)
3 マイルス・デイビスの音の選択
4 Lickをどれぐらいの期間でどれだけ消化できるか
5 ギア関連(YAMAHAサイレントベース、フィル・ジョーンズベースアンプx4c)
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1 モードの色、音と他変数の共感覚
音を別の感覚で表すのは楽しい。なぜこの音が別変数にピタリと当てはまるのかうまく言語化できないことが興味深い。仮に言語化しても理にかなっているかどうかはハードウェア個体差がある。私はモードを以下の色で知覚した。
(Key of Cで選んだので別のキーだと色は異なる)。明るさという観点ではIonianからLydianまでは割とブライトな色だと知覚した。MixolydianからLocrianまではテンションが強く、よりダークな色がマッチするというロジックが脳に組み込まれているのかもしれない。
似たようにジャズベースはコーヒーで例えるとキリマンジャロ、プレペはマンデリンに当てはまると思う。ジャズベースのタイトでミッドが押し出されたような音色はキリマンジャロのような浅煎で酸味が強い豆のような気がするし、プレペのメローでダークなサウンドはマンデリンの深煎りで苦みのある味のような気がする。この豆の例えだと音と色だけでなく、味という変数が音と結びつく。苦さはダークで酸味はどちらかというとブライト。
話は少し逸れるが音楽を何か別のコンセプトで紐づけて理解しようとするのが好きで、絵で例えると、音は間違いなく色で、リズムがパターン、模様、形、アーティキュレーションはテクスチャ(塗り)と捉えている。確かウェインショーターともう一人のアーティスト(名前忘れた)は二人とも絵描きで、絵を通して作曲アイディアをシェアしていたと聴いたことがある。
2 ジョー・ヘンダーソンの曲(Recorda Me, Isotope)
ジョー・ヘンダーソンをよく聴いた週だった。ジョー・ヘンダーソンは元々Inner Urgeを聴いたことがキッカケでよく聞くようになった。ただ、初めて聴いたときはコルトレーンと比べてどこか物足りなさを感じた。フレーズが液体のようなスムーズさだからか、コルトレーンとは対照的に一フレーズに対するアクセントを感じづらかった。ジョーはマイケル・ブレッカーのヒーローの一人でもあるし、再度集中して聴きだすと途端にハマってしまった。様々なアルペジオパターンとリズム言語の組み合わせが素晴らしい。ジョーヘンのリズム感には圧倒される。
今週はRecorda MeとIsotopeを練習した。Recorda Meはメロディアスでジョーヘンが15歳のときに作曲したらしい。天才だと思う。Isotopeはパズルのようなフレーズを組み合わせた感じで聴いていて面白い。Recorda Meはオリジナルも良いが、Steps時代のマイケル・ブレッカーの録音が好き。熱量しかない。
3 マイルス・デイビスの音の選択
マイルスの良さを再認識した。再認識というだけあって、普段からマイルスのすごさを当たり前と捉えてしまうことが多かった。よくよく考えるとマイルスはおかしい。インタビュー動画みてもここまで自身の世界の中に自己意識がある人間がいるのはマイルスぐらいだと思う。マイルスの世界は、他人間が生きている共通世界と完全分離されている。エゴを捨てきってただひたすら速いフレーズを弾くのではなく、頭の中にないサウンドを常に追い求めようとしているのが音から伝わってくる。一音一音に意図が隠されているので、デコードすると実は圧倒的な情報量が隠されている。音だけでなくバンドリーダーとしての彼の立ち振る舞い、服装のセンスから話し方全てがマイルスの音に収束する。
今週はマイルスのロクリアンの使い方を分析していた。マイルスの曲: Four とSolarでDΦ G7のコードで必ずマイルスが選択しているフレーズがあり、(Realbookではコード進行が異なるものの、FourはBb7上をDΦ G7にマイルスは置き換えている)耳に残ったので採譜してみたらロクリアンのダークさからCにResolveするのが心地よかった。
4 Lickをどれぐらいの期間でどれだけ消化できるか
頭の片隅に積まれた大量の未消化lickの山がある。ここ最近は採譜量が消化量に追いつかなった。一週間単位で練習すると決めたlickの量が多すぎた。一週間に8個のlickを浅く練習するより2個ぐらいに絞って必ず12キーで色んなコード進行に当てはめた方がいいことに気づいた。後者の方が長期的に体得できるlickの数が多くなると考えた。記憶力が良ければ前者でもできるかもしれないが、まず私の記憶力は悪く、大量のlickを消化しようとすると自身の精神内にアップロードしてlickを細かに切り刻んだり捻じ曲げたりする作業があまりできなくなってしまう。特にコントラバスはメカニカルな動作でlickを覚えるのもエレキベースより物理的制約があるだけでなく頭でlickの構成音を覚えないとフレットがないので誤魔化しができない。楽器の特性と熟練度でどれぐらいの期間でどれだけlickを消化できるかは変わってきそうだ。ブレッカーは1つのlickを自身の精神にアップロードしてから三ヶ月ぐらいで突然出てくると彼の若い頃のインタビューで語っていたのを思い出す。
5 ギア関連(YAMAHAサイレントベース、フィル・ジョーンズベースアンプx4c)
数年前から欲しかったサイレントベースを今月末手に入れる。どうしても今のコントラバスの調整が、特にDとGが指板に当たりすぎてしまい、音が伸びない。ヘリコアのライトゲージにしてからより顕著になった。おそらく弦のテンションが低いから弦振動が増し、指板に当たりやすくなったと考える。今回はサイレントベースを予約する際にクロサワ楽器でベースを調整してくれる人に、指板がバズらないギリギリのレベルでローアクションで調整してもらうようにお願いした。とても楽しみだ。ついでに今友人に借りていた10wのベースアンプもこれを機に良いモノにしようとPhil JonesのX4Cを買った。スペック上は超小形の割に35w出る。また、モバイルバッテリーで稼働するのでサイレントベースとこれを持ち歩いて外で弾けたら楽しそう。